ママが作ったスーツで参上!
低空飛行のスーパー・ヒーロー!
インディアンムービーウィーク(IMW)2019で上映された覆面ヒーロー・コメディー作品。インドでの公開時はあまり評判が芳しくなく、主演のタイガー・シュロフ出演作品の中ではもっとも低評価作品だったにもかかわらず(注)、日本での上映は満員御礼が出るほどの大盛況となった。その背景には、子どもの頃から月光仮面や仮面ライダーなどの覆面ヒーロー作品に親しんできた日本の文化があると思われる。
注:Box Office Indiaのタイガー・シュロフ興収履歴。
https://boxofficeindia.com/actor.php?actorid=10652
-Table of Contents
[あらすじ (公式サイトより)]
武術教師アマンは、化学薬品工場につなぐ橋を建設するため、スィク教徒の神木を切り倒そうとする企業オーナー・マルホートラの用心棒に痛めつけられる。翌朝アマンは無傷で回復し、神木に超人力を授けられたことに気づく。母お手製の衣装に身を包み、失敗を乗り越え、アマンはヒーロー「フライング・ジャット」に成長。町の破壊を企てるマルホートラらと対峙する。
高所恐怖症のため飛行は低空。母のお使いもこなす、ほのぼのとした覆面ヒーローを主人公に、自然保護を訴えるメッセージを放つ。テコンドー黒帯のタイガー・シュロフが流れるようなアクションとダンスを披露。豪華なソングシーンは振付師でもあるレモ・デソウザ監督ならでは。ネイサン・ジョーンズ(マッドマックス 怒りのデス・ロード)が怪物悪役を好演。
[作品詳細]
原題:A Flying Jatt (ヒンディー語/ 2016)
監督:レモ・デソウザ
出演:タイガー・シュロフ、ジャクリーン・フェルナンデス、アムリター・シン、ケイケイ・メーナン
音楽:サチン-ジガル
配給:SPACEBOX
(C)Esselvisionproduction pvt Ltd
▼インディアンムービーウィーク公式サイト
https://imwjapan2019.com/
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今どきのインド映画は恋とダンスだけじゃない! 東京・キネカ大森で「インディアンムービーウィーク2019」開催
(ZakZak 夕刊フジ 2019.9.6掲載)
https://www.zakzak.co.jp/ent/news/190906/enn1909060005-n1.html
(文中敬称略)
[蛇足情報]
インドでつくられたスーパーヒーローものといえば、テレビシリーズの「シャクティマーン(原題:Shaktimaan/ 1997年〜2005年放送)がある。そのほかヒンディー映画では、タイガー・シュロフの父、ジャッキーが主演した『Shiva Ka Insaaf(意訳:シヴァの正義/ 1985)』、 日本でも公開された『クリッシュ』(原題:Krrish 3/ 2013)、タミル映画では『Hero』(2019)などが公開された。『Krrish 3』はインドで大ヒット。覆面ヒーローものも人気なのかと思いきや、『フライング・ジャット』インド公開時のレビューはさんざんで、ハフィントン・ポストなどは、「なんでこんな作品を作ってしまったのか。製作をオーケーしたのは誰なんだ」という、そこまで言わなくても、という内容。そのほか、母親が酒飲みとして描写されていることなどがシク教徒の感情を逆撫すると多くの批判を受けていた。公開中止を求める署名活動も起こっていた。
[資料]
‘A Flying Jatt’ Review: Why Does This Even Exist?
Huffington Post, 2016/08/25, By Suprateek Chatterjee
https://www.huffingtonpost.in/2016/08/25/a-flying-jatt-review-why-does-this-even-exist_a_21458703/
Stop the Release of Flying Jatt or Accept to Terms
https://www.change.org/p/stop-the-release-of-flying-jatt-or-accept-to-terms-shri-pahlaj-nihalani-central-board-of-film-certification-bharat-bhavan-91-e-walkeshwar-road-mumbai
Maha Sikh bodies object to trailer of ‘A Flying Jatt’
Times of India, Aug 9, 2016
https://timesofindia.indiatimes.com/city/amritsar/Maha-Sikh-bodies-object-to-trailer-of-A-Flying-Jatt/articleshow/53608629.cms
インドでの興収は散々なものではあったが、日本ではインド公開時にSPACEBOXがインド人向け上映会にて上映。その後、インディアンムービーウィーク(IMW)2019にて上映し、満席も出る人気となった。
「フライング・ジャット」日本での局地的ヒットを、IMW公式ツイッターは、昭和の覆面ヒーロー、月光仮面とレインボーマンとの共通性と解いている。覆面ヒーローを見るとわくわくするのは、ヒーロー・シリーズを見て育った日本人特有の感情なのかもしれない。そこに、タイガー・シュロフの超絶ダンスと滑らかなアクションが加わるから、特撮、ダンス好きの映画ファンには、一見必至の作品かもしれません。
https://twitter.com/ImwJapan/status/1174643878651019265?s=20