きっと、またあえる(原題:Chhichhore/ 2020年8月21日(金)公開予定)

きっと、またあえるポスター

世界で大ヒットした『ダンガル きっとつよくなる』のニテーシュ・ティワーリー監督の2019年ヒット作が、『きっと、またあえる』の邦題で公開が決定。

[あらすじ]

受験に失敗したラガヴはベランダから身を投げた。病院に搬送されるも、危険な状態が続く。シングルファーザーとして彼を育てたアニは、意識不明のラガヴに学生時代の昔話を語り始める。そこに集まってきたのは、学生時代の愉快な仲間たち。入学時にオンボロ学生寮に振り分けられ、学内対抗戦では万年最下位の「負け犬」と呼ばれていた学生たちだった。ある年、「負け犬」たちは最下位から脱出しようと、作戦を組んで対抗戦に臨む。ラガヴを心配し、集まってきた父の学友たちの昔話に、ラガヴは少しずつ笑顔を取り戻し始める。

超難関のインド工科大学(IIT)ムンバイ校出身のニテーシュ・ティワーリー監督が、受験に失敗した自身の息子にヒントを得て作り上げた。「努力したなら失敗しても悪くない、ということを伝えたかった」という。日本でも大ヒットした『きっと、うまくいく』(原題:3 Idiots/ 監督:ラージクマル・ヒラニ/ 2009)と同様に、熾烈なインドの受験戦争と学歴社会を描くが、本作のユニークな点は、超個性派の「負け犬たち」の顔ぶれ。マザコン、呑んだくれ、エロ好き、毒舌、等々。なかでも、白菜髪型のエロ好き「セクサ」を演じたヴァルン・シャルマがかなり味わい深い。川谷拓三の「負け犬の唄(ブルース)」は、負けすぎて母に迷惑をかけたことを悔やむ男の唄だが、『きっと、またあえる』の負け犬たちは、元気をくれる超個性派の面々。

[作品詳細]

原題:Chhichhore(ヒンディー語/2019)
監督:ニテーシュ・ティワーリー(ダンガル  きっと、つよくなる)
出演:スシャント・シン・ラージプート(PK)、シュラッダー・カプール(サーホー)、プラティーク・バッバル(ムンバイ・ダイヤリーズ)、ヴァルン・シャルマ(フックレー ないない尽くしの男たち)
配給:ファインフィルムズ
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2020年8月21日(金)、シネマート新宿・心斎橋にて公開予定。

▼公式サイト
http://www.finefilms.co.jp/chhichhore/

COVID-19感染拡大防止のため、公開予定が当初の4月から8月21日(金)に変更されました(5月29日追記)。

[関連情報]

【予告編】『きっと、またあえる』|2020年4月24日(金)公開/ Cinemas by 松竹
https://cinema.ne.jp/video/chhichhore2020032518/

「きっと、またあえる」個性豊かな“負け犬”が集結、学生時代と30年後の比較写真/ 映画ナタリー 2020年4月3日
https://natalie.mu/eiga/news/373980

大ヒットインド映画「きっと、またあえる」予告編&ポスタービジュアル解禁/ TV Life 2020年03月25日
https://www.tvlife.jp/entame/269402

『ダンガル きっと、つよくなる』監督最新作 大学の仲良しチームの30年後の姿を解禁!!『きっと、またあえる』/BANGER!!! 2020.04.03
https://www.banger.jp/news/31291/

インド映画『きっと、またあえる』大学の学生寮が舞台、現代へと繋ぐ“永遠の友情”を描く/ Fashion Press  2020.04.03
https://www.fashion-press.net/news/60034

[蛇足情報]

前述の通り、ニテーシュ・ティワーリー監督といえば、脚本も手がけた父と娘のレスリング物語『ダンガル きっと、つよくなる』(2016)が日本でも公開されている。オリンピック出場を成し遂げられなかった元レスリング選手の父をアーミル・カーンが演じ、娘に夢を託し、鬼コーチとなって娘をトレーニングする。実話ベースの父娘のスポ根ドラマはインド、中国で大ヒットした。

ティワーリー監督作品には、娯楽の中に社会的なメッセージが織り込まれているものが多い。ヴィーカス・バハル(クイーン 旅立つわたしのハネムーン)と共同で監督し、サルマン・カーンがプロデュースした監督デビュー作『Chillar Party(意訳:ちびっこギャング)』(2011/ヒンディー語)では、ホームレス少年と暮らす野良犬を守るために大人に正義を突き返す子どもたちの反逆を描いた。監督2作目の『Bhoothnath Returns(意訳:幽霊の王、再び)』 (2014/ ヒンディー語)は、幽霊となった老人がスラムの少年と出会い、政治腐敗を知って選挙に乗り出すという奇想天外なコメディーだった。

『ダンガル きっと、つよくなる』に続く長編4作目となる本作の原題は、〝Chhichhore(不真面目、軽薄)〟。難関大学の「負け犬寮」に暮らす学生たちが、変人を並べた陳列棚のような作品だ。脇役を眺めているだけでもおなかいっぱいになりそうな濃い面々が揃っており、主人公のアニを演じるスシャント・シン・ラージプート、彼の学友でのちに妻となるマヤを演じるシュラッダー・カプールの存在感が若干薄い。学内戦のライバルとなるラギーを演じるプラティークも紆余曲折の俳優。かつてはアーミル・カーンの妻、キラン・ラーオの監督作『ムンバイ・ダイヤリーズ(原題:Dhobi Ghat/ ヒンディー/ 2010)』で主役を演じた華々しい俳優だったが、本作ではギスギスした悪役を演じあげた(最近では、ラジニカーント主演のタミル映画『Darbar』〈2020〉での悪役が記憶に新しい)。

『きっと、うまくいく』では入寮後、先輩が新入生たちをいじめるシーンが出てくる。本作でもそれに似た場面があるが、そこをやんわりと笑いに変える。その立役者が愛すべきエロ男、ヴァルン・シャルマ演じるセクサ。ドタバタ青春コメディー『フックレー/ないない尽くしの男たち』(原題:Fukrey/ 2013/映画祭上映)で笑いのツボをおさえていたヴァルン・シャルマは、本作でも絶好調。トゥーシャル・パンデー演じるマザコンのマミーは、父親役の俳優もかなり面白い。毒舌の「アシッド」を演じたナヴィーン・ポリシェッティは、テルグ映画でデビューし、2019年には自身が脚本を手がけ、主演した探偵もの『Agent Sai Srinivasa Athreya』が話題になった。ほとんどの俳優が非主役級ながらも、演技力が豊かで、インド映画界の層の厚さを感じずにはいられない。

音楽は『ダンガル きっと、つよくなる』でもティワーリー監督と組んだ、安定のプリータム。ノーカットながらも、オリジナルからダンス要素が少なく、いわゆるマサーラー映画ではないが、プリータムの曲が効果的に情感を盛り立てる。

名門工科大が舞台ということで、同じ設定の『きっと、うまくいく』と比較する点も出てくると思う。『うまくいく』のテーマは熾烈な学歴社会で、主人公は勝者だった。一方、『またあえる』のメインは、「負け犬」と呼ばれた学生たちの奮闘。インド工科大学(IIT)ボンベイ校出身の、ティワーリー監督の思い出を元につくられており、実在の人物にヒントを得てキャラクターが練られているという。

本作の主人公は神通力ばりのスーパーヒーローではなく、競争に負けたごく普通の若者たち。劇中、「(インドの大学は)100万人が受験する、合格するのは1万人、99万人の子供たちが路頭に迷う」というセリフが出てくる。努力しても報われない時はある。かつて、「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言した政治家は、多くの著名人から「1位を目指さなければ意味がない。2位を目指したら5位か6位にしかなれない」と批判された。バンクーバーオリンピックで浅田真央選手が小さなミスから金メダルを逃した時、多くの日本国民がため息をついた。世間には、トップ以外は認められない風潮がある。そういった厳しさは、インドも日本もさほど変わらないだろう。ティワーリー監督は、受験に失敗した自身の息子にアイデアを得て本作を構想したと話している。「今の子どもたちは受験にプレッシャーがかかりすぎている。ベストを尽くせば、失敗は何も悪いことではないと伝えたかった」。この作品は、惜しくも勝利を逃した人々への、監督からの応援メッセージだといえるだろう。

本作が当初公開予定だった4月は、新生活の季節だった。望んでいた進路に進めず、苦いスタートを切る人がいるかもしれない。1位を取れなくても、頑張りは決して無駄にならない。「負け犬寮」の面々は、そんな温かな励ましをくれる。

(文中敬称略)

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